午睡は香を纏いて
「安心しなって。そんなことさせないから」

「で、でも……」


こんな風に手足の自由さえ奪われた状態では、どうすることもできないよ。
あたしを抱くセルファが、穏やかな声音で言った。


「いつだったかカインが言ってた。カサネを見つけられたのは奇跡だ、って。奇跡は何度もおこるものじゃない。次はもう、君を見つけられないだろう」

「…………セルファ」

「君はこの世界の希望なんだ。絶対に殺させたりするもんか」


と、壁に衝撃が走った。何かで叩いているらしい。ガンガンと激しい音がした。


「話し声がする! 女が気付いたのか!?」


乱暴な物言いと音にびく、と震えると、セルファが大丈夫、と耳元で囁いた。
それから、外に向かって大きな声で言った。


「処刑される前に神典の暗唱をしていただけだ! ユーマはまだ意識がない!」

「ふん、神典だと? 巫女姫を殺しておいて、神の膝元にいけるはずがないだろう!
お前らの死体は八つに裂いて野犬に食わせることになってるんだよ、この汚らわしい罪人が!」


ガン、と力任せに殴りつける音がした。

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