午睡は香を纏いて
「仕込んでたんだ。なかなかいいだろ? こんなモノでも、無いよりマシだしね」


こんなものを入れていたなんて、と驚いたあたしにふふ、と笑ってみせる。
それを使って、忌々しい縄を切った。

くっきりと縄の跡がついた手首が、じんじんと痺れている。内出血でも起こしているのではないだろうか。
しかし、手足だけでも解放されたことに、ほんの少しだけだけど心が落ち着いた。

思い出して、首元に手をやる。
鎖の感触も、小さな重みも、そこにはなかった。
本当に、ないんだ……。

大切なものを失っってしまった。あれがないと、困るのに……。


「あ、れ?」


ば、とセルファを見た。手首を撫でさすっていたセルファが驚いたように目を見開く。


「な、なに? カサネ」

「会話……、できてる」

「は? そりゃ、できてるけど、なんで?」

「対珠がないのに、できてる」

「対珠?」


セルファが首を傾げた。

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