午睡は香を纏いて
セルファの体がクッションになり、大きな衝撃は免れた。
しかし、急に明るい場所に放り出されらせいで目がくらんでしまった。
思っていたよりも日は高かったんだ、と思うと同時に首元を掴まれて、無理やり体を起こさせられた。
太い指が首に食い込んで息ができない。顔を歪めると、厳めしい顔をした男が覗き込んできた。
汚らしいものでも見るかのような、蔑んだ瞳があたしを見回す。


「ふん、まだ死にそうにないじゃないか。これならブランカまでもつだろう」

「か、は……っ、苦し……」

「薄汚い山賊め。リレトさまの詮議が済んだら、この俺が殺してやるよ。こいつで、な」


空いていた手を振る。その人差し指の根に、おぞましい指輪が嵌っていた。


「悪人の命を喰ってくださるありがたい指輪だぞ。楽しみにしとけ、はははは」


周囲にも人がいるらしい。追従するような笑い声が聞こえた。

「……っ、は、……っ」

「ははは、泣いておるわ。山犬にも劣る畜生が、一人前になあ。
お前たちのようなものは神の膝元に行けぬだろうが、試しに天に助けでも乞うてみろ。
ん? お前、縄はどうし……がぁっ!?」


ふ、と首を絞めていた力が緩んだ。地面にどさりと倒れこむ。


「げほっ……、はっ、はぁ……っ」


空っぽになりかけていた肺に空気が戻る。
咳き込みながら顔を上げると、あたしを掴んでいた男がゆっくりと倒れていった。どう、とうつ伏せに倒れたその背中には、ついさっき見たナイフが深々と沈んでいた。
白い団服に、じわじわと血が滲む。


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