午睡は香を纏いて
七章・魂の記憶(29/46)


「行け!!」


倒れた男の腰元から長剣を引き抜いたセルファが叫んだ。


「セル……、」

「行くんだ! カサネ!」

「セルファ……っ」


緊張がピークを越すと、こんな現象が起きるのだろうか。

ぐん、と視界がクリアになって、そこに映る全てのことを、同時に把握できた。
時は酷くゆっくりと流れ、スローモーションの映像を眺めているような錯覚を覚えた。

明るい陽射しに照らされた、青草の茂る草原。
緑の絨毯の合間に、土がむきだしになった道があった。右手には、鬱蒼とした森。

馬から降りて駆けてくる別の男に、セルファは向かって行った。対峙する男も、剣を抜く。陽の光に切っ先が光るのが見えた。


「どうした!? 何があった!?」


背後から声がして、振り返れば前方にあった馬車から男が一人下りてくるところだった。


「グルが男の方にやられました!」

「何だと!? ええい、男は斬ってい……!」 


男が急に転がり落ちた。押し出すようにして一緒に転がり出てきたのは、カインだった。
両手を縛られているのか、ぎこちない動きで体を起こす。


「逃げろ! そのまま行け!」

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