午睡は香を纏いて
「カイン!」

「行け!」

「失礼、殿下!」


馬車から出てきた新たな男が、カインの後頭部を殴りつけた。ごす、という鈍い音と共に、カインは地面に倒れこんだ。


「いやああっ! カイン!」


気を失ったのか、ぴくりとも動かない。
足元に倒れたカインを一瞥した男は、大きな声をあげた。


「男は斬り捨てて構わん! 女だけは生きたまま確保しろ」


その命令に反応したのか、馬上で固まっていた残り二人の男が馬首をあたしに向けた。


「逃げろ! カサネ!」


幾回も斬り結びながら叫ぶセルファ。その剣戟は、相手の男が優勢に見えた。

右手の森に視線をやると、その茂みの奥に人の姿が見えた。
あれはきっとトリスさんだ。セルファの言う通り、潜んでくれていたのだろう。

今駆け出せば、あそこまで行ける。

でも、このまま行ってしまえば二人は……!


「行け!」


セルファの声に押されて、足が一歩を踏み出しかけた、瞬間。
剣を振り上げたセルファの右腕に、刃が深く斬りつけられた。


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