午睡は香を纏いて
「状況の説明もしないといけないわ。彼はまだ眠ってるから、後でいいでしょう?」

「顔を見ないと安心できないんです。あたしを守るためにあんな怪我したんです! お願いしますっ、ちょっとだけでも会わせてください!」


血に染まったセルファの、苦しそうな顔しか思い出せない。セルファの顔を見て、あんなの忘れてしまいたい。
ローブの向こうにある瞳に、必死に言った。


「……、シルヴァ!」


ため息をついたかと思うと、占い師は外に向かって声を上げた。
次いで、入口を仕切っていた布の合間から、のそりと大きな体の男の人が入ってきた。


「声がすると思ったら、起きたのか」

「……シル、さん?」


その人の声音は、あの酒場にいたシルさんと同じだった。けれど、様子が全く違っていた。

長い前髪を後ろに流して、顔を露にしているせいだろうか。
意思の強そうな、力のある茶色の瞳が酷く目を引く。焼けた褐色の肌に、自信が溢れた表情。
大きなシャツを一枚着ているのだが、ボタンを外していて、筋肉のついた体がちらちらと見えている。

酒場では控えめな、静かな人のように見えたのに、随分と雰囲気が違う。あんな目の光をもっていた人だったなんて。


「ああ、そうだ。本当の名はシルヴァだがな。よかったな、助かって」

「は、い。ありがとう、ございます……」


無愛想に言われた。頭を下げながら、やっぱりこの人と占い師は繋がっていたんだと思う。
一体どういう人たちなのだろう。


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