午睡は香を纏いて
ぷるぷると首を横に振ると、ふうん、とさして気にした様子でもない返事が返ってきた。


しかし。
サラと自分を比較してみてはっきりしたけど、どうにもタイプが違いすぎる。
今更勘違いだとか人違いだとか言うつもりはないけど、でもやっぱり納得いかない。

見た目はこの際さておいたとして、人々に敬われるような素晴らしい人間が、どうしてあたしみたいな鈍詰まりの子になるというの。
劣化にも程があるというものだろうに。

もしかして命珠って気持ち悪いやつの影響、とか? 
だとしたら、リレトって人益々許せない。
サラを殺しておいて尚、来世にまで不幸を与えるか。


なんて、あたしのことはいいや。
ちらり、とレジィを窺い見た。レジィは、どう思ってるんだろう。
綺麗で強いサラが、あたしみたいな冴えない子になってしまったことを。
とても大切に思っている人が、別人になっていることを。


ショック、だろうな。やっぱり。
出会った当初、レジィは寂しそうな表情を浮かべることがあったけど、
あれはあたしの中に『サラ』としての記憶だけでなく、
『サラ』自身を見つけ出せないことへの悲しみだったんじゃないだろうか。

命珠を壊す為には、あたしが必要だという。
だからこうして共にいて、レジィは守ってくれると言うけど。
そんな目的がなければ、レジィはあたしと一緒にいたくないのかもしれない。
あたしの姿すら、見たくないかもしれない。
あたしはサラだったのかもしれないけど、もうレジィの求めるサラじゃないんだから。


考えがそこに至ると、急に心が重たくなった。
自分の存在が、誰かを悲しませている。苦しませている。
もうそんなの、十分経験してきたのに。
異世界という新しい場所であっても、あたしはやっぱり誰かの重荷になってしまうのだろうか。



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