午睡は香を纏いて
「カサネ! どこでもいいからしっかりつかまってろ!」
厳しい声に頷いて答える。
そんなことより今は後ろから追ってくる人たちから逃げることが先決だ。
しかし、リレトの言った通り、あたしたちを乗せた馬は相当疲労が溜まっていて、その走りはすぐに後続に追い付かれることになった。
横に並んだのは、鉄鎧を身につけた人だった。
表情の窺えない顔、そしてその手に剣を握っているのを確認できたときには、それをこちらに振るってきた。
「カサネ! 目つぶってろっ」
言われずとも、恐怖がすでに堅く閉じさせていた。
切りつけられる、そう思ったのに、耳にしたのは鈍い音と、低い唸り声だった。
馬が地を蹴る足は止まらず、どさりと重たいものが落ちるのを、後ろに聞いた。
どうなったのか分からない。怖くて目は開けられない。あたしは身を硬くして、レジィの動きを全身で探ろうとした。
左手はあたしを支えながら、手綱を握っている。
右は剣。それは追っ手に向けられているようだ。近いところで金属がぶつかり合う音が絶えず聞こえてくる。
数回、斬りつけた様な音と、低い悲鳴がした。あれは誰かが傷ついた音、声。
怖い。怖いよ。こんな命のやり取りの場所、嫌だ。
「く……っ」
レジィの声に、は、とする。もしかして、斬られたの?
「レジィ!?」
「見なくていい! 閉じてろっ」
鋭い声にびくりとなる。咄嗟に開けた目を再び強く閉じた。
大丈夫なのだろうか。ううん、大丈夫なんかじゃない。だって、さっき沢山の人影を見た。
あれだけの人数を、レジィ一人がどうにかできるはずがない。
厳しい声に頷いて答える。
そんなことより今は後ろから追ってくる人たちから逃げることが先決だ。
しかし、リレトの言った通り、あたしたちを乗せた馬は相当疲労が溜まっていて、その走りはすぐに後続に追い付かれることになった。
横に並んだのは、鉄鎧を身につけた人だった。
表情の窺えない顔、そしてその手に剣を握っているのを確認できたときには、それをこちらに振るってきた。
「カサネ! 目つぶってろっ」
言われずとも、恐怖がすでに堅く閉じさせていた。
切りつけられる、そう思ったのに、耳にしたのは鈍い音と、低い唸り声だった。
馬が地を蹴る足は止まらず、どさりと重たいものが落ちるのを、後ろに聞いた。
どうなったのか分からない。怖くて目は開けられない。あたしは身を硬くして、レジィの動きを全身で探ろうとした。
左手はあたしを支えながら、手綱を握っている。
右は剣。それは追っ手に向けられているようだ。近いところで金属がぶつかり合う音が絶えず聞こえてくる。
数回、斬りつけた様な音と、低い悲鳴がした。あれは誰かが傷ついた音、声。
怖い。怖いよ。こんな命のやり取りの場所、嫌だ。
「く……っ」
レジィの声に、は、とする。もしかして、斬られたの?
「レジィ!?」
「見なくていい! 閉じてろっ」
鋭い声にびくりとなる。咄嗟に開けた目を再び強く閉じた。
大丈夫なのだろうか。ううん、大丈夫なんかじゃない。だって、さっき沢山の人影を見た。
あれだけの人数を、レジィ一人がどうにかできるはずがない。