大吉男と大凶女
「理不尽ばあちゃんて」

まぁ確かにしっくりくるあだ名だとは思う。実際理不尽だったし。

「てかなんで恭子はそんなこと知ってんだ?」
「え?」

今頃になって、そこがツッコミ所だということに気付いた。

「いや、だから、何であのお婆ちゃんのこと知ってんだ、って」
「あ、そのこと?」
「そう、そのこと」
「だってあのお婆ちゃん朝とかたまに一緒のタイミングで乗るもん」
「朝?今昼だぞ?それにさっきは前中から乗ってたじゃん。恭子は確か――」
「うん、神山」
「だよな」

神山は高柳を終着駅にするなら、前中の三つ前の駅にあたる。

「駅の近所って神山駅の近所に住んでるのか?」
「だったはず……」

曖昧な返事だった。とりわけ深く聞いたところで特に意味は無いのだが。

そんな会話をしている間に、改札を抜け、駅を出た。

俺は駅の入口付近で立ちながら晴紀を待った。約束の時間まで、まだ十分くらいある。

「…………」
「…………」

俺と恭子は並んで駅前で佇んでいた。

「あれ?恭子も誰かと待ち合わせか?」

恭子はキョトンとした表情で俺の顔を見上げた。
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