黒き藥師と久遠の花【完】
(俺、これからどうすればいいんだろう?)

 やっと会えて、今度こそ側を離れず、命をかけて守りたいと思っていた。
 自分が手にしたものすべてを犠牲にしてでも、守りたいと――。

 今も『久遠の花』を守りたいという思いはある。
 しかし薬ではなく毒を作っている姉は、『久遠の花』だと言えるのだろうか?

 こうして悩んでいる間も、戦いは続いている。
 姉の作った毒が、自分の大切な人を傷つけ、彼の国を苦しめている。

 もし毒を作るのを止めて欲しいと願えば、姉は止めてくれるかもしれない。
 ただ、恐らくイヴァン王が許してくれないだろう。

 最悪、自分が殺されて、毒作りを止められなくなる可能性が高い。
 もし殺されなかったとしても、もう姉には合わせてくれないだろう。

 毒を作らせたくない。
 姉の側に居続けたい。

 この二つが頭の中を目まぐるしく駆けながら、激しくぶつかり合う。
 衝突を起こす度に頭に痛みが走り、みなもはその都度、奥歯を噛み締めた。

 そんな時に、コンコンと誰かが扉を叩いた。

「みなも、入らせてもらうぞ」

 ナウムの声に、みなもは顔をしかめる。
 今は相手にしたくない。あの顔を見れば、さらに考えがまとまらなくなる。

 しかし、みなもが断るよりも先に、ガチャッと扉の開く音がした。

 疲労で重くなった体を動かすのは辛かったが、みなもは腹部に力を入れて素早く身を起こしてベッドから離れた。
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