黒き藥師と久遠の花【完】
 認めたくないが、ナウムの言う通りだ。
 反論できない歯がゆさに、みなもは思わず視線を遊技盤に落とす。

 いつの間にかチュリックは、ナウムの勝利が近づいていた。

(このままだとナウムの好きなようにされてしまう。どうにか逆転できる手は……)

 勝てる手段はないかと考えるが、動揺してうまく頭が回らない。
 どうにか落ち着くまで時間を稼ごうと、みなもは熟考するフリをする。

 そんな動揺を見透かすように、ナウムはフッと鼻で笑った。

「負ける勝負を粘っても苦しいだけだぜ? お前はオレに敵わない……そう認めてしまえば楽になれるぞ」

 ゲームのことを言っているのだろうが、みなもの耳は彼の他の意図を拾い上げる。

 ようは『オレのものになれば、楽になれる』と言いたいのだろう。

 ナウムに従ってしまえば、姉と一緒に居続けることができる。
 ずっと会いたいと、守りたいと願っていた姉と。
 そのために自分の心を殺すことになったとしても構わない。
 
 少し前なら、迷うことなくナウムに従っていた。
 けれど、今は――。

 みなもは腕を伸ばし、遊技盤の角に赤駒を置いた。
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