黒き藥師と久遠の花【完】
 不吉なことを言うなと怒鳴りたくなったが、勝負に負けた自分が悪い。

 むしろ予想外に引き際が良くて、肩透かしを食らったような、やっと終わったと安堵するような、複雑な気分だった。

 みなもが瞼を開けると、ナウムが腕を組み、優越感に浸っているような腹立たしい笑みを浮かべて、こちらを見下ろしていた。

「もう動いてもいいぜ。……今日はこれで勘弁してやる。どうせオレのものになるのは時間の問題、がっついて押し倒すのは野暮ってもんだろ」

「大した自信だね。俺がここから逃げるかもしれないのに」

「断言してやる、お前は逃げねぇ。やっと会えたいずみを見捨てられるのか? それができるなら、とっくの昔に仲間を探すのを諦めて、自分だけのために生きているはずだからな」

 思わずみなもはナウムから視線を逸らす。
 嫌になるほど、こちらの性格をよく分かっている。

 苦々しい思いに顔をしかめるみなもの肩を、ナウムがポンと叩いて「じゃあな」と部屋を出ようとする。
 扉の前に立った時、彼はくるりと振り返った。

「オレの部下になると言うまでは、いずみの所には連れて行かない。気が済むまで、じっくりここで考えて、覚悟を決めてくれよ」

 返事などできる訳もなく、みなもは無言でナウムを見送る。
 彼が去った後。その場から動けず、ずっと扉を睨み続けるとしかできなかった。
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