黒き藥師と久遠の花【完】
 店を何件も回った後、みなもは乾物の食材を扱った店へ立ち寄った。
 普段から食べられている物の中にも、毒や薬に使える材料はある。なのでいつも街の市場を巡る時は、必ず訪れるようにしていた。

 店先の大カゴに山積みとなっている乾物を眺めていると、みなもの隣に気配が薄い細身の男性が並ぶ。
 そして小さな声で、ボソリと呟いた。

「ナウム様がお呼びです。すぐに屋敷へ戻って下さい」

 どうやら彼もナウムの手先らしい。
 案の定、監視されていたかと思いつつ、みなもは彼に顔を向けず小声で「分かった」と答えた。

 それを聞き、男は他の店へ移るフリをして、自然な様子で離れていく。
 言われた通りにするのは面白くなかったが、まともな用事があるなら仕方ない。
 みなもは踵を返し、元来た道を戻っていく。

 市場の終わりに差しかかった時、 複数の人が各々に市場へ向かおうと、前から歩いてくる。

 その中の一人に、みなもの目は釘付けになった。

(えっ……!)

 驚きのあまり、その場に足が止まる。

 短く刈り上げられた、赤髪の青年だった。
 背は高く、暗く濁った茶色の瞳。肌の色は心なしか浅黒い。

 その顔立ちは、今、一番会いたいと思っていた人によく似ていた。

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