黒き藥師と久遠の花【完】
     ◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 夜になり、みなもはベッドへ体を横たえて目を閉じる。
 何も見えない、完全な闇がみなもの視界に広がる。
 そして取り留めのない心の声が、何かの呪文を唱えるかのように、延々と流れ続けた。


 これからどうすれば良いんだろう?
 どの道を選べばいいんだろう?

 姉さんと一緒にいたい。
 でも、そのためにはバルディグの毒を認めなくてはいけない。
 好きな人を苦しめている毒を、受け入れないと……。

 レオニードと一緒にいたい。
 でも、彼の元に戻れば、姉さんに会うことはできなくなる。
 ずっと『守り葉』として、『久遠の花』を、姉さんを守りたいと願い続けた思いを、断ち切らないと……。


 自分が眠りに落ちているという実感はある。
 だから、これは夢なのだ。
 答えの出ない心の声だけが流れる夢。

 眠りの中でさえ、考えを止めること許されない悪夢。
 
 心のつぶやきに紛れ、かすかにチッ、チッ、という音が聞こえる。
 部屋に置かれた時計と同じ音。
 夢の中に流れる異質な音は、耳障りだった。

(あの時計、止めたほうが良さそうだ)

 みなもは重くなった瞼を開けて、体を起こそうとする。

 しかし体は仰向けのまま、指一本すら動かせなくなっていた。

 そして闇の中にはっきりと浮かんだナウムの顔が、人の悪い笑みを浮かべてこちらを見下ろしていた。

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