黒き藥師と久遠の花【完】
    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 昼過ぎになり、ナウムが屋敷へいずみを連れてきた。
 顔を見た瞬間、嬉しくて駆け寄りたい衝動に駆られてしまう。

 しかし事情を知らない人間が見ている前では、臣下の姿勢を崩す訳にはいかない。
 みなもはナウムと共にいずみを出迎えると、私心を抑えて硬い足取りと表情を作り、来賓室へと案内した。

 三人が部屋の中へ入り、扉を閉めて中央のソファーへ腰を下ろす。
 と、みなもの向かい側に座ったいずみが申し訳なさそうに笑った。

「ごめんなさい、みなも。もっと堂々と会えたら良かったのだけど……」

「謝らないで。姉さんの立場を考えたらしょうがないよ。こうして会えるだけで俺は十分だから」

 みなもはいずみに微笑み返すと、自分の隣に座ったナウムへ顔を向けた。

「こうやって姉さんと会えるのも貴方のお陰。本当にありがとう、ナウム」

 不本意だったがナウムの部下になっている以上、白々しくても彼を立てなければ。
 
 にっこり破顔するみなもへ、ナウムが胡散臭いまでの爽やかな笑顔を見せた。

「やっと離れ離れになった姉さんに会えたんだ。これからも機会を作って、会えるようにしていく。約束するぜ」

 ナウムのヤツ、姉さんの前だと上手に猫を被るな。
 ……俺も人のことは言えないけれど。

 表面上は親しい空気を漂わせ、ナウムと心を通わせ合っているように見せる。
 いずみを心配させまいとする思いが一緒のせいか、嫌になるほど息がピッタリ合ってしまう。

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