黒き藥師と久遠の花【完】
 あと残っているのは、いずみだけ。
 倒れた男たちをまたぐと、みなもは青ざめた顔をしたいずみの元へ向かおうとした。

「おーおー、それがお前の本性か」

 背後の声に、みなもはゆっくりと振り向く。

 もっと大勢を引き連れて来ると思っていたが、予想に反して現れたのは一人だけだった。
 何人もの人が倒れ、酷い惨状になった部屋を見ても、彼の顔色は変わっていなかった。

「驚かないんだなナウム。お前の中では、俺がこうすることぐらいお見通しだったってことか」

「まあ予測の範囲内ではあるな。ただ、オレが考えていた中で、一番最悪の展開だな」

 クッ、と押し殺した笑いを漏らしてから、ナウムはいずみに目を向け、背筋を伸ばして一礼した。

「エレーナ様、すぐに終わらせますから、ご安心下さい」

 腰に剣は挿しているが、抜かずにそのままナウムが歩いてくる。

 以前ザガットの宿屋で、彼の身軽な動きは見ている。
 それだけ侮られているのかと思うと、頭に血が上りそうになった。

(ずっと嫌な思いをさせられたんだ、コイツにだけは容赦しない)

 今なら麻痺の毒でナウムも弱まるハズ。叩きのめすには絶好の機会だった。

 ナウムに対峙しようと、みなもは体の向きを変えようとする。
 だが――。
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