黒き藥師と久遠の花【完】
「みなも、そこから動くな」

 低く鋭い声が耳に届いた直後、みなもの足は動きを止める。
 ここで止まる気はないのに、体が言うことを聞かなかった。

 何をした、と言おうとしても口は動かず、ただナウムを見ることしかできなかった。

(どうなっているんだ?! ナウムのヤツ、俺に何をしたんだ!)

 どうにかして動こうとするが、身じろぎ一つできない。
 そんなみなもの焦りをあざ笑うかのように、悠々とした足取りでナウムが近づいてきた。

 毒の香りが届く所まで来た時、やれやれと言わんばかりにナウムは肩をすくめた。

「麻痺の毒か……このまま部屋に垂れ流されるのは困るぜ。早く止めてくれ」

 体が動かないのに、毒を抑えられる訳がないだろ!

 心の中でみなもが叫んでいると、勝手に右手が上がり、腕輪の琥珀色の石を咥え、噛み砕いてしまう。

 スウゥゥゥ、と体から匂いが消えていくのが分かる。
 それと同時に、みなもの全身から血の気が引いた。

 ナウムがみなもに近づき、不敵に笑う。

「良い子だ、みなも。そのまま待っていろ」

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