黒き藥師と久遠の花【完】
    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 腕をナウムに掴まれ、強く引っ張られながら、みなもは与えられていた部屋へ連れて行かれる。
 そして乱暴に突き飛ばされ、ベッドへ横倒しにさせられた。

 ここまでされても、体は自分が望むようには動かず、声を出すことすらできない。
 心と鼓動だけが、悲鳴を上げていた。

 ギチリ。ナウムがベッドに上がり、みなもを仰向けにする。
 こちらを見下ろしながら、彼は口に手を当てて唸った。

「やっぱり声が聞けんのは面白くねぇな。みなも、声は出してもいいぞ。ただし、舌を噛んで死のうとするなよ」

 何だ、この妙な命令は?
 みなもは訝しく思いながら口を開く。
 今まで出せなかった声が、いつものように話せる手応えがあった。

 自分の体なのに、ナウムの言われた通りにしか動けない。

 その事実に気づき、みなもは一瞬目を丸くし、ナウムを睨みつけた。

「ナウム……一体、俺に何をしたんだ?」

「なあに、ちょっとオレの言うことを聞いてもらえるように、暗示をかけさせてもらった。言っただろ? オレはお前を無条件で信用するほど、お人好しじゃないってな」

「暗示だって?! いつの間にそんなことを――」

「覚えがなくて当然だ。これが夢だと思うように暗示をかけていたからな」

 夢……あの、繰り返し見続けていた悪夢。
 まさか、あれが現実で起きていたのか?

 嘘だ。
 コイツの言うことは信用できない。

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