黒き藥師と久遠の花【完】
みなもは反論しようと喉に力を入れる。
しかし出てきた声は、寒さに震える小鳥のようにか弱かった。
「あんな夢、現実にはありえない。適当なことを言うな」
「認めたくない気持ちは分かるぜ。だが――」
ゆっくりとナウムがこちらの首筋に顔を近づけ、舌でなぞっていく。
そして背中に腕を滑り込ませ、優しく抱擁する。
今まで感じてきた悪夢の感触が、生々しく現実に浮上してきた。
「――お前の体は、しっかりとオレを覚えている」
記憶の中の悪夢が、一瞬にして現に躍り出る。
自分が心で思っていたことは、口に出してナウムと会話していた。
最初は拒んでいたのに、段々と彼に体を触られることが心地良くなって、このまま流されてしまいたいと思ってしまった。
レオニードのことを想いながら、ナウムにその面影を見てしまった。
信じたくない悪夢のすべてが、現実だった。
愕然となるみなもへ、ナウムが間近に顔を合わせてきた。
「本当はな、お前がこんな真似をしなければ、暗示をかけるだけで終わっていたんだ。みなもがオレを憎み続けたとしても、同じ目的のためにここへ居てくれるなら、それで構わなかった」
軽薄な人の悪い笑みが、ナウムから消えた。
どこか陰がありながら、熱くこちらを射抜いてくる眼差し。
初めてナウムの素顔を見た気がした。
「オレに向けるのは愛情でも、憎しみでもいい。お前の体だけじゃなく、心も欲しかった。いずみを手に入れられなかった飢えを、早く満たしたかったんだ」
愛おしそうに、ナウムはみなもの頬を両手で包み込む。
そして唇が重なる寸前まで、顔を近づけた。
「もう容赦はしない。オレの大切なものを傷つけられるぐらいなら、お前の心なんていらない。その体と『守り葉』の力だけで十分だ」
しかし出てきた声は、寒さに震える小鳥のようにか弱かった。
「あんな夢、現実にはありえない。適当なことを言うな」
「認めたくない気持ちは分かるぜ。だが――」
ゆっくりとナウムがこちらの首筋に顔を近づけ、舌でなぞっていく。
そして背中に腕を滑り込ませ、優しく抱擁する。
今まで感じてきた悪夢の感触が、生々しく現実に浮上してきた。
「――お前の体は、しっかりとオレを覚えている」
記憶の中の悪夢が、一瞬にして現に躍り出る。
自分が心で思っていたことは、口に出してナウムと会話していた。
最初は拒んでいたのに、段々と彼に体を触られることが心地良くなって、このまま流されてしまいたいと思ってしまった。
レオニードのことを想いながら、ナウムにその面影を見てしまった。
信じたくない悪夢のすべてが、現実だった。
愕然となるみなもへ、ナウムが間近に顔を合わせてきた。
「本当はな、お前がこんな真似をしなければ、暗示をかけるだけで終わっていたんだ。みなもがオレを憎み続けたとしても、同じ目的のためにここへ居てくれるなら、それで構わなかった」
軽薄な人の悪い笑みが、ナウムから消えた。
どこか陰がありながら、熱くこちらを射抜いてくる眼差し。
初めてナウムの素顔を見た気がした。
「オレに向けるのは愛情でも、憎しみでもいい。お前の体だけじゃなく、心も欲しかった。いずみを手に入れられなかった飢えを、早く満たしたかったんだ」
愛おしそうに、ナウムはみなもの頬を両手で包み込む。
そして唇が重なる寸前まで、顔を近づけた。
「もう容赦はしない。オレの大切なものを傷つけられるぐらいなら、お前の心なんていらない。その体と『守り葉』の力だけで十分だ」