黒き藥師と久遠の花【完】
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夕日が沈み、部屋の中が段々と翳っていく。
ベッドで片膝を立てて座っていたナウムは、隣で静かに横たわるみなもの体をジッと見下ろす。
巷の女たちとは違う、引き締まったしなやかな肢体。
しかし男として生きてきた割に、胸や腰にはしっかり女性らしい丸みがある。
戯れに彼女の肩から腰に向けて、手を滑らせる。
男物の服で隠し続けていたその肌は瑞々しく、少しも指に引っかかるものはない。
意識があった時は、これだけでも良い反応を返してくれたが、今は微動だにしないことが少し残念だった。
まだ起きないのだろうかと、ナウムは愛撫を続けながらみなもの顔に視線を移す。
硬く閉じた目の下はほのかに赤く、まだ泣いた跡が消えていなかった。
(……こんなことなら、もっと早くからこうすれば良かったな)
ナウムはフッと、自嘲気味に笑う。
みなもがこの部屋に滞在した時点で、暗示にかかることは時間の問題だった。
暗示をかけたのは、この部屋にある置き時計。
この時計が刻む秒針の音を聞き続ければ、深い眠りにつき、耳元で囁いた言葉に従うようになる。
ただ、中には効きにくい人間も存在する。自分が良い例だ。
それを確かめるため、ゲームをした際にみなもへ「動くな」と試しに命じてみた。
移動の疲れと、いずみの現実に困惑して心が衰弱したせいだろう。
たった数刻、秒針の音を聞き続けただけで、最初の暗示はかかってしまった。
夕日が沈み、部屋の中が段々と翳っていく。
ベッドで片膝を立てて座っていたナウムは、隣で静かに横たわるみなもの体をジッと見下ろす。
巷の女たちとは違う、引き締まったしなやかな肢体。
しかし男として生きてきた割に、胸や腰にはしっかり女性らしい丸みがある。
戯れに彼女の肩から腰に向けて、手を滑らせる。
男物の服で隠し続けていたその肌は瑞々しく、少しも指に引っかかるものはない。
意識があった時は、これだけでも良い反応を返してくれたが、今は微動だにしないことが少し残念だった。
まだ起きないのだろうかと、ナウムは愛撫を続けながらみなもの顔に視線を移す。
硬く閉じた目の下はほのかに赤く、まだ泣いた跡が消えていなかった。
(……こんなことなら、もっと早くからこうすれば良かったな)
ナウムはフッと、自嘲気味に笑う。
みなもがこの部屋に滞在した時点で、暗示にかかることは時間の問題だった。
暗示をかけたのは、この部屋にある置き時計。
この時計が刻む秒針の音を聞き続ければ、深い眠りにつき、耳元で囁いた言葉に従うようになる。
ただ、中には効きにくい人間も存在する。自分が良い例だ。
それを確かめるため、ゲームをした際にみなもへ「動くな」と試しに命じてみた。
移動の疲れと、いずみの現実に困惑して心が衰弱したせいだろう。
たった数刻、秒針の音を聞き続けただけで、最初の暗示はかかってしまった。