黒き藥師と久遠の花【完】
熱くなっていたレオニードの体が、急に冷えていく。
そして漆黒の泥のような、暗く粘り気のある――恐ろしく冷たい怒りが、激しくうねりながら広がっていく。
許せない。
みなもから意思を奪って、屈辱を与え続けるこの男が。
彼女に意識があれば、どれだけ悔しがることだろうか。
未だかつて、ここまで人に殺意を覚えたことはなかった。
レオニードは鞘から剣を抜き、ナウムを睨みつけた。
「浪司、あの男を殺せばみなもの暗示は解けるのか?」
話の途中で浪司から剣を抜き、構えを取る気配がした。
「解けはせんが、新しい指示が出されなくなるから意味はあるな」
彼には珍しく、冷ややかで抑揚のない声。
素早く隣を見やると、獲物を確実に仕留める野獣のような目をナウムに向けていた。
しかし、こちらの怒気や殺気を受けても、ナウムの顔から笑みは消えなかった。
「オレを殺す、かあ……気が合うな。オレもお前らを殺したくて仕方がなかったんだよ」
そっとナウムがみなもに顔を近づけ、わざとらしい猫なで声で囁いた。
「アイツらを始末しろ、みなも。特にあの若い男は、確実に息の根を殺してしまえ」
「分かりました、ナウム様」
淡々とした声で返事をすると、みなもの目が据わる。
次の瞬間。
地を力強く蹴って駆け出すと、一直線にレオニードへ向かい、懐へ入り込んだ。
咄嗟にレオニードは後ろへ下がり、距離を取ってから剣を交える。
ギィンッ、という高い音が辺りに響く。
剣の向こう側から見える彼女の目は、虚ろでありながら憎悪の色を漂わせていた。
そして漆黒の泥のような、暗く粘り気のある――恐ろしく冷たい怒りが、激しくうねりながら広がっていく。
許せない。
みなもから意思を奪って、屈辱を与え続けるこの男が。
彼女に意識があれば、どれだけ悔しがることだろうか。
未だかつて、ここまで人に殺意を覚えたことはなかった。
レオニードは鞘から剣を抜き、ナウムを睨みつけた。
「浪司、あの男を殺せばみなもの暗示は解けるのか?」
話の途中で浪司から剣を抜き、構えを取る気配がした。
「解けはせんが、新しい指示が出されなくなるから意味はあるな」
彼には珍しく、冷ややかで抑揚のない声。
素早く隣を見やると、獲物を確実に仕留める野獣のような目をナウムに向けていた。
しかし、こちらの怒気や殺気を受けても、ナウムの顔から笑みは消えなかった。
「オレを殺す、かあ……気が合うな。オレもお前らを殺したくて仕方がなかったんだよ」
そっとナウムがみなもに顔を近づけ、わざとらしい猫なで声で囁いた。
「アイツらを始末しろ、みなも。特にあの若い男は、確実に息の根を殺してしまえ」
「分かりました、ナウム様」
淡々とした声で返事をすると、みなもの目が据わる。
次の瞬間。
地を力強く蹴って駆け出すと、一直線にレオニードへ向かい、懐へ入り込んだ。
咄嗟にレオニードは後ろへ下がり、距離を取ってから剣を交える。
ギィンッ、という高い音が辺りに響く。
剣の向こう側から見える彼女の目は、虚ろでありながら憎悪の色を漂わせていた。