黒き藥師と久遠の花【完】
(くっ……いくら耐毒の薬を飲んでいるとはいえ、動きが鈍っていない。でも、負けてたまるか!)

 悔しげに歯を食いしばりながら刃を翻し、みなもは再びナウムを斬りつけた。

 だが、二度、三度と剣を振るっても、紙一重でかわされてしまう。

「ほらほら、どうした? そんな攻撃じゃあ、オレは殺せないぞ」
 
 ナウムは愉快げな声で挑発すると、みなもの攻撃を刃で受け流し、頭へ目がけて剣を振り下ろそうとした。

 動きが大きくなった。
 その一瞬を見逃さず、みなもは体を大きくひねる。

 そして思いきりよく、ナウムの剣に向かって回し蹴りを放った。

 ギィンッ。
 高い音が辺りに響き、彼の手から剣が離れる。

 ナウムは一瞬目を丸くし、苦笑しながら舌打ちした。

「女のクセに、重い蹴りを入れやがる。……そういえば、靴にも武器を仕込んでいたな」

 ダッドの宿屋で対峙した時を思い出し、みなもはフッと笑う。

「あの時は仕留め損なったけど、今度は外さない」

 右のつま先を蹴って靴から隠し刃を出すと、顎を切り飛ばす勢いで蹴り上げる。
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