黒き藥師と久遠の花【完】
 こちらの顔から足にナウムの視線が動いたことに気づき、みなもは息を呑む。

 手に持っている短剣で、足首の腱を切ってしまうつもりだ。
 念には念を押して、鈍器で足の骨を砕かれてしまうかもしれない。

 すぐに訪れるであろう苦痛よりも、ナウムに完全に捕らわれてしまうことが恐ろしかった。

 ナウムの手がゆっくりと動き、剣の切っ先を足へ向ける。

 そして何の躊躇もなく、思い切りよく振り下ろした。


 ――キィィィンッ!

 突然、金属を強く弾く音が響き渡った。

 ほぼ同時に、みなもの体からナウムの重みが消える。
 すぐに体を起こそうとした時、こちらへ誰かが駆け寄ってくる気配がした。

「みなも、無事か?!」

 顔を上げると、そこには血相を変えたレオニードがいた。
 
 助かった……。
 みなもは思わず安堵の息を零しながら頷くと、彼の手を借りて立ち上がる。


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