黒き藥師と久遠の花【完】
「あんなに美人で可愛い人から言い寄られて、レオニードも悪い気はしてなかったんじゃないの?」
みなもは悪戯めいた目でレオニードの様子を伺う。
真面目な彼のことだから動揺するだろうと思っていたが……ただ気難しい顔で首を横に振るだけだった。
「ずっと昔から知っているせいか、妹みたいなものとしか考えられないんだ。だから『恋人になりたい』と言われても、困るばかりで応えられなかった」
どうやらクリスタの想いに応えられないことを、後ろめたいと思っているようだ。
彼女に未練はないのだと安堵する反面、身内のような深い繋がりがあるのだと思うと胸が苦しくなる。
自分以外の人と仲良くしないで欲しいと思うのは無茶なワガママだ。
そう頭では分かっているのに、心は納得せず子供のように駄々をこねる。
なんて身勝手で弱い人間なのだと、自分で自分が情けなくなってしまう。
こんな自分を見せる訳にはいかないと、みなもは微笑んで誤魔化す。
「ヴェリシアに戻ってから、クリスタさんと話はしたの?」
「いや……コーラルパンジーを探しに行く時に、見送ってくれたのが最後だ」
「せっかくだから、ここにいる間に一度会って話したほうが良いよ。クリスタさん、きっと貴方がここへ戻ってくるまで、ずっと心配してたと思うから」
本音を言えば会って欲しくないが、束縛してレオニードに呆れられるのはもっと嫌だ。
何も気にしていないフリをしながら、みなもは心の中で何度も自分に言い聞かせる。