黒き藥師と久遠の花【完】
 少しずつ気持ちを落ち着かせていると――。
 ――グイッと腕を引っ張られ、体勢が崩れて前へ倒れ込みそうになった。
 
 しかし、すぐレオニードに正面から抱き止められ、彼の肩にみなもの顎が乗る。
 背中に回された両腕に力がこもり、思わず背中がのけ反った。

 熱い吐息が首筋にかかって間もなく、温かく柔らかな感触が伝わってくる。
 ただそれだけで体から力が抜けて、みなもは慌ててレオニードの胸元へしがみついた。

 跡にならないよう優しく首筋を吸ってから、彼が耳元で囁く。

「俺からは会いに行かない。彼女には悪いが、君を不安にさせたくない」

 甘いよ、レオニード。俺を甘やかせ過ぎだろ。
 唇に苦笑を浮かべながら、みなもは瞼を閉じて、体に広がっていく温もりに感じ入る。

 自分に呆れているのに、レオニードの言葉が嬉しくて仕方がない。
 少し首を後ろに引いて顔を合わせると、みなもは彼の首へ腕を回した。

「……ありがとう」

 自分から唇を寄せて、レオニードの唇に重ね合わせる。

 尽きることのない愛しさも、こうして触れることが一番の幸せだと思う心も、少しはレオニードに伝わっているだろうか?

 そんなことを考えていると、レオニードの手がみなもの腰に回される。そしてゆっくりと仰向けに寝かされた。

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