黒き藥師と久遠の花【完】
 着替えている最中、「エマさん、持ってきました」とクリスタが部屋へ入ってきた。
 その手にあるのは、華美な模様が施された平たい金属製の箱。
 よく見ると、蓋の中央には見覚えのある紋章――マクシム王の手紙の封筒に描かれていた、竜の横顔をかたどった紋章が刻まれていた。

 何が入っているんだろう?
 みなもが視線を送っていると、クリスタと目が合う。

 一瞬、彼女の目付きが鋭くなったが、すぐに柔和な笑みを浮かべながら、部屋の隅にあった机の上に箱を置いた。

「ありがとう、クリスタ。早速だけど、こっちに持ってきてくれるかしら?」

 エマの声にクリスタは頷くと、箱の蓋を開ける。
 臙脂の布が敷かれた箱の中には、美しい首飾りや耳飾り、指輪や腕輪があった。

 どれも朝の海を思わせるような青玉を散りばめており、銀の鎖や留め金などによく映えている。
 特に首飾りの中央にある青玉は、赤子の手の平ほどの大粒だった。

 針子たちが青玉の美しさに目を輝かせる中、みなもだけがギョッとなる。

(あんな箱に入っているんだ、おそらく国宝……一時だけだとしても、よく平民に貸せるな。欲にくらんで盗む輩が出てくるかもしれないのに)

 それだけ治安が良い証拠だとは思うが、こんな代物を身につけて襲われでもしたら……という不安が拭えなかった。
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