黒き藥師と久遠の花【完】
 クリスタは慎重に首飾りを手にすると、みなもの背後へ回ってつけようとする。

 じゃらり、と首に重みがかかった瞬間、背筋に悪寒が走った。
 顔は見られないが、おそらく冷めた目でこちらを見ているのだろう。刺々しさと、妙に張り詰めた空気を感じる。

 考えすぎかもしれないが、クリスタに命を握られているような気がして怖かった。

 こちらの不安をよそに、クリスタの手によって他の装飾品も体に取り付けられる。
 見た目は美しいが、ジッとしていると肩や手首、耳たぶに微痛が広がる。

 王侯貴族の女性たちは、常にこんな装飾品を身につけている。優雅に振る舞っている裏側では、痛みに耐えているのかと思うと感心してしまう。
 ――こんな煩わしい思いをしながらでも、美しく装いたいのかと半ば呆れもするが。

 女神役をまっとうすれば、自分が死ぬまで無縁の代物。今だけの辛抱。そう考えると気は楽になった。

 一通り身に付けたみなもから少し離れ、エマや針子たちがこちらを眺める。

「思った通り、みなもさんにとてもよく似合っていますわ。きっと例年にないほど素晴らしいパレードになりそうね」

< 303 / 380 >

この作品をシェア

pagetop