黒き藥師と久遠の花【完】
 エマの弾んだ声に、針子たちが小刻みに頷く。
 社交辞令だと分かっていても、褒められると気分が落ち着かなくなる。
 みなもは照れ隠しに、自分の体をじっくりと見回した。

 装飾品だけを見れば豪華すぎて浮いたように感じたが、こうして身につけてみると、青玉の輝きがドレスによく似合っている。
 ショールに施されているのは百合の花と蝶の刺繍。この華やかさの中では大人しめだが、それが清楚さとなって全体を上品に見せていた。

(俺なんかには不相応だと思うけど、レオニードがどんな顔するのかを見るのは楽しみだな)

 ちょっとこの格好でいるのが面白くなってきたと、みなもはクスリと笑う。しかし、
 
「後はカツラを被せて、お化粧すれば完璧。きれいなお肌だから、お化粧のやり甲斐がありますわ」

 エマのこの一言に、思わず脱力して項垂れそうになった。
 着替えだけでも面倒なのに、まだ工程があるのかと思うとげんなりしてくる。

 もし再び同じことをする羽目になったら、マクシム王の命令であっても全力で辞退するだろう。ひょっとしたら国外逃亡するかもしれない。
 今だけの辛抱だと言い聞かせ、みなもは重くなりかけた気分を浮上させた。
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