黒き藥師と久遠の花【完】
 衣装に合わせて、どんなティアラが似合うのか、どんな模様を施したつけ爪を着けるのか……エマや針子たちは賑やかに話し合い、候補の物を取り出してはみなもに着けて、すぐにまた別の物を着けてを繰り返していた。

 彼女たちのなすがままにされていると――みなもの鼻へ、かすかに甘い香りが届いた。

(これは眠り香じゃないか! まさか……)

 嫌な予感がして、みなもは一人顔を白くする。
 今ここには国宝の装飾品も、手の込んだドレスもある。売れば一生豪遊しても使い切れないほどの大金を掴めるのは明らかだ。

 このままにすれば、間もなく仕立て屋にいる人間が全員眠ってしまう。
 しかも全員が女性――年頃の若い者がほとんど――という現状。装飾品などを奪うだけでは済まないかもしれない。

 だが、今すぐここから逃げようとすれば、相手が強引な手段に出るかもしれない。逃げ惑う彼女たちを全員守り抜くのは至難の業だ。
 もし未遂に終わったとしても、また次の機会を狙ってくるだけだ。

 エマたちを傷つけられず、衣装や装飾品を守るためには――。
 みなもは素早く頭を働かせ、自分がどう行動するかを考えた後、小さく息をついた。

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