黒き藥師と久遠の花【完】
(あれは……クリスタ、さん?)

 皆が倒れているのに、驚いた気配はまったく感じられない。
 考えたくはなかったが、彼女が眠り香を焚いた輩の協力者――あるいは張本人としか思えなかった。
 クリスタの手には何もなかったところを見ると、おそらく仲間を呼びに行ったのだろう。

 ここへ戻ってくる前に準備をしなければ……。
 みなもはドレスの裾をたくし上げ、腰の方へと手を持っていく。

 そこから取り出したのは、ドレスや宝石の煌びやかさとはかけ離れたの、無骨な革の手袋だった。
 素早く手袋をはめ、ギュッと手を握り込んで感触を確かめる。
 よく使い込まれて柔らかくなった革は、手にとても馴染んでいた。

 ドレスを汚さぬよう手を前に放り出し、眠ったフリをし続ける。

 ガチャリ。
 扉が開き、クリスタと頭からフードを深く被った三人が部屋へ入ってきた。
 顔はフードに隠れて見ることはできなかったが、三人の肩幅は広く、体つきから彼らが男性だと分かった。

「おい、あれがそうなのか?」

 一人の男がみなもを指さし、小声でクリスタへ尋ねる。

「ええ……よく眠っているわ。今の内に取り外しましょう」

 男たちは顔を見合わせて頷き、ゆっくりとみなもへ近づいてきた。

「こんなにきれいなツラしてんのに、男だって言うんだから驚きだよな」

「本当にもったいねぇ。これで女だったら脱がせ甲斐があるけどなあ……男じゃあつまらん。さっさと終わらせてしまおうぜ」

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