黒き藥師と久遠の花【完】
 低く唸るような小声でやり取りしながら、一番前に出てきた男が手を伸ばしてきた。

 衣装に手をかけられる前に、みなもはそっと男の手に触れる。
 次の瞬間――。
 
「うわっ!」

 男が弾かれたように手を引き、その手を押さえながらうずくまった。
 後ろにいた別の男が、「ど、どうしたんだ?!」ど慌てて駆け寄ってくる。

 前かがみになったところを見計らい――バッ! みなもは上体を勢いよく起こした。
 
 クリスタと男たちが驚きで息を引き、素早くこちらを見る。
 顔は隠されていても、困惑の色までは抑えきれていなかった。

「こ、この野郎、大人しくしやがれ」

 残りの男たちが両腕を広げ、みなもを捕らえようとしてくる。足元に倒れている仲間や針子たちのせいで、彼らの動きは鈍い。
 余裕で避けることもできたが、みなもは敢えて男たちの間へと踏み込む。

 そして手を伸ばし、フードの下の顔に触れた。その刹那、

「「――――っ!」」

 声にならない声で叫びながら、男たちは顔を手で覆い、その場へ崩れ落ちた。

 残されたクリスタは呆然とその場へ立ち尽くし、一気に顔色を白くした。
< 308 / 380 >

この作品をシェア

pagetop