黒き藥師と久遠の花【完】
「……どうして? この匂いをかいで、起きていられるハズがないのに――」

「悪いね、俺はこういう類の物が効かない体質なんだ」

 みなもは軽く肩をすくめてから、感情を消した瞳でクリスタを見つめた。

「クリスタさん、そこから動かないでくれるかな? できればこれを女性に使いたくない」

 言いながら手を上げ、クリスタへ手袋を見せつける。

「この手袋には毒が塗られているんだ。触っただけでも激痛が走って、体を麻痺させてしまう毒が……」

 反射的にクリスタが「うそ」と声を上げ、口元を手で覆う。
 毒の手袋が嘘ではないことぐらい、床で寝転がっている男たちを見れば分かるだろう。

 ますます彼女の顔は白くなったが、挑むようにこちらの視線を真っ直ぐ受け止める。
 敵意に満ちた瞳の奥に、どこか切羽詰まったような色が混じっていた。

 そんなクリスタが妙に引っかかり、みなもは少し声を柔らかくした。

「どうしてこんな真似を? レオニードが知ったらすごく悲しむってことぐらい分かっているハズなのに、何故?」

「……そうよ、分かっていたわ。でも、貴方にだけは教えない。レオニードを奪った貴方には――」

「意地を張っても無駄だよ。どんな頑固者でも、強制的に何でも話をさせる薬もあるからね」 

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