黒き藥師と久遠の花【完】
「今までよく耐えてきたね。これで貴女を傷つけた罪滅しになるとは思わないけど……必ず助けてみせる」

 大きく目を見開いた後、クリスタの目から涙がこぼれた。

「助けて、くれるの? 私、ずっと嫌な態度しか取っていなかったのに」

「そんな事情があったなら、俺に怒りをぶつけてきて当然じゃないか。むしろ、あれぐらいで抑えていたクリスタさんは優しいよ」

 仲間を探すために一人で旅をしていた時、想い人を取られたといって、恋敵を殺そうとした女性を目撃したことがある。
 それに情報を集める際に耳へ入ってきた話には、恋愛がらみの事件や、恋敵への恨み節が山ほどあった――多分、得られた情報の半分以上を占めている。

 みなもは笑みを消してクリスタの近くに寄ると、声を潜めた。

「襲撃してきた連中は、そこに転がっている人だけかな?」

 涙を手の甲で拭いながら、クリスタはこくりと頷く。

「ええ。店内に入って来たのは、私とこの三人だけ……一度、彼らのアジトへ連れて行かれたことがあるけど、そこで十人以上は見かけたから、ひょっとしたら外にも仲間が控えているかもしれない」

 こんな大それた真似をするのだから、万が一に備えてすでに手を打っているはず。恐らくクリスタの読みは当たっているだろう。

 どう対処していこうかと考えている途中――。

 突然、視界の脇に黒い大きな影が動く。

 みなもは反射的にそちらへ顔を向けようとした。
 しかし思いのほか影の動きは素早く、姿を見失う。

 床へ視線を向けると、一番最初に倒れた男の姿が消えている。

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