黒き藥師と久遠の花【完】
「ちょっと小耳に挟んだ噂なんだが……裏町にあるゴルバフ商会が、近隣を荒らしている賊と繋がっているらしいぞ。まあ、噂だから本当かどうかは分からないけどな」

 思わず二人は青年を見てから、互いに顔を合わせた。

「どうするレオニード?」

「行こう。ここで立ち止まっているよりも、事の真偽を確かめに行ったほうがいい」

 言い終わらぬ内に、レオニードとボリスは走り出す。
 早くなる鼓動に煽られ、焦燥感が際限なく膨らんでしまう。

 こんな非常時に冷静さを失って、良いことなど一つもない。
 レオニードは心の中で、自分へ言い聞かせるように呟く。

(みなものことだ、うまく立ち回って生きているはず。彼女の強さを信じなければ)

 細い路地を抜けて人通りの多い市場へ出ると、二人は買い物客を避けながら駆けていく。
 何人かと肩をぶつけて驚かせてしまったが、立ち止まる余裕はない。
 ただ「すまない」と言い残していくことで精一杯だった。
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