黒き藥師と久遠の花【完】
    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ほとんど人通りのない裏路地を使い、賊たちはみなもとクリスタの腕を引っ張りながら進んでいく。
 足が追いつかず転びそうになるが、みなもはどうにか体勢を立て直して歩き続ける。

 チラリと隣のクリスタを見ると、青ざめたままの顔に疲労の色が滲んでいる。
 この中で一番小柄な彼女がこの速さについていくのは、傍目で見ても無理があった。

 余計なことを言うなと殴られる覚悟で、訴えたほうが良いだろうか?
 みなもがそう思っていると、

「お前ら、もう少しゆっくり歩け。女性を丁寧に扱わねぇと嫌われるぜ」

 先頭を歩いていたキリが振り返り、仲間たちに指示を出す。
 言われて彼らはムッとした顔になったが、渋々と歩みを遅めた。
 
 みなもの後方で、誰かが「余所者のクセに、でかい顔しやがって」と小声でぼやくのが聞こえてきた。

(ふうん……一枚岩って訳じゃないのか。ありがたいね、隙が出来やすい)

 少しでも油断させるために不安げな表情を作っているものの、心の中はかなり冷静だった。
 心優しく帰してくれるとは考えられないが、殺す気もないらしい。ピリピリとした警戒した空気が漂っていても、殺気は感じられない。

 大方、衣装や装飾品と一緒に自分たちも売り飛ばすつもりなのだろう。そのほうが金になるし、口封じにもなる。
 
 みなもがそう割り切っていると、不意に前から視線を感じて目を向ける。
 ――視線はキリのものだ。
 顔を隠したままでも、どこか湿り気を帯びた視線を飛ばしてくるのが伝わってくる。

< 321 / 380 >

この作品をシェア

pagetop