黒き藥師と久遠の花【完】
「クリスタ……もうこの間のお仕置きを忘れたのか? いいだろう。今度はもっと厳しく躾けてやる」 

 笑っているが、この男の目は本気だ。
 このままではクリスタが別室に連れられて、酷い暴力を受ける羽目になる。

 このまま静観はできないと、みなもは口を開いた。

「ふうん。随分と器の小さな男だな」

 ゲイルは虚を突かれたように笑みを消して、こちらを睨みつける。

「……何だと?」

「力づくでないと、ひとりの女性すら従えないんだろ? 同じ男として情けないね」

 そう言うとみなもは鼻で笑い、見下した目でゲイルを見た。
 彼の顔がみるみる内に赤くなり、激昂の色を濃くしていく。
 
 狙い通り、クリスタからこちらに怒りを移してくれた。
 この調子なら拳が飛んでくるかもしれないが、それでいい。
 彼女が傷つくよりも、自分が痛い思いをした方がマシだった。

 ゲイルが体をこちらへ向け、拳を握って腕を引く。
 殴られる衝撃に耐えようと、みなもが強く歯を食いしばると――。

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