黒き藥師と久遠の花【完】
「ゲイル、オレがせっかく手に入れたお宝を傷つけるのはやめてくれ」

 キリが肩を抱いたままの手を引き、みなもの体をわずかに後退させる。
 そして、こちらを庇うように前へ出ると、肩を軽くすくめた。

「もう歯向かわねぇよう、オレがしっかりと躾けてやる。次にここへ連れて来る時は、心から喜んでアンタの靴に口付けるようになってるぜ」

 一瞬ゲイルは眉を潜めたが、すぐに笑みを浮かべ直した。

「そいつは良い。一日だけやるから、存分に仕込んでこい」

「楽しみにしていてくれ。……ああ、そうだ。良ければクリスタの躾はもう少し待ってくれないか? コイツの変わり様を見て、どんな顔をするか見てみたい」

 興味をそそられたのか、ゲイルが舌舐めずりする。
 
「たまには趣向を変えてみるのも面白そうだな。分かった、楽しみは後で取っておくとするか」

 話がついたらしく、キリはみなもを拘束するよう、肩を抱く手に力を加える。
 痛みに思わず顔をしかめつつ、みなもは小さく息をつく。

 取りあえずクリスタが傷つけられるのは回避できた。
 後は自分の身を、全力で守らなければ……。

 バルディグの悪夢再来だけは、どうにかして避けたい。
 キリに引っ張られて部屋を後にしながら、みなもは次に打つべき手をいくつも考えていた。
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