黒き藥師と久遠の花【完】
突き当りの扉が閉ざされた部屋まで行くと、キリは手早く扉を開け、中を見回して人がいないことを確かめた後、みなもを引きずり入れる。
娼婦たちの小部屋を二つ合わせた程の、大きな部屋だった。
元は荷物置きだったのか、隅には使い古しのシーツや、何が入っているのか見当もつかない木箱などが山積みになっている。
ベッドの上で乱れたままのシーツに、脱ぎ捨てられた衣服が散乱している。
だが、情事の後というよりは、ずぼらな男性が生活しているだけのような印象を受けた。
不意にキリが、ポンと肩を叩いてきた。
「少しでもオレに逆らえば、クリスタがどうなるか……賢いアンタのことだ、分かっているだろ?」
返事をする気にもなれず、みなもはキリから視線を逸らす。
未だに顔を隠したままで表情は伺えないが、きっと優越感に浸りながら、色めき立った目でこちらを見ているのだろう。
キリに気付かれないよう、みなもは右の袖口を指で探り、小さな針を取り出す。
その先端には、体を脱力させて身動きを取れなくする毒が塗られていた。少なくとも三日は動けなくなる。
(さあ、もっと俺に近づいて来い。確実にこの毒を打ち込んでやるから)
こちらの狙いに気づいた様子もなく、キリがこちらへ顔を近づけてきた。
そして耳へ吐息がかかるほどに口を近づけ、かろうじて聞き取れる声で囁いた。
『オレの話を聞いてくれ。アンタと取り引きがしたい』
娼婦たちの小部屋を二つ合わせた程の、大きな部屋だった。
元は荷物置きだったのか、隅には使い古しのシーツや、何が入っているのか見当もつかない木箱などが山積みになっている。
ベッドの上で乱れたままのシーツに、脱ぎ捨てられた衣服が散乱している。
だが、情事の後というよりは、ずぼらな男性が生活しているだけのような印象を受けた。
不意にキリが、ポンと肩を叩いてきた。
「少しでもオレに逆らえば、クリスタがどうなるか……賢いアンタのことだ、分かっているだろ?」
返事をする気にもなれず、みなもはキリから視線を逸らす。
未だに顔を隠したままで表情は伺えないが、きっと優越感に浸りながら、色めき立った目でこちらを見ているのだろう。
キリに気付かれないよう、みなもは右の袖口を指で探り、小さな針を取り出す。
その先端には、体を脱力させて身動きを取れなくする毒が塗られていた。少なくとも三日は動けなくなる。
(さあ、もっと俺に近づいて来い。確実にこの毒を打ち込んでやるから)
こちらの狙いに気づいた様子もなく、キリがこちらへ顔を近づけてきた。
そして耳へ吐息がかかるほどに口を近づけ、かろうじて聞き取れる声で囁いた。
『オレの話を聞いてくれ。アンタと取り引きがしたい』