黒き藥師と久遠の花【完】
 この男はナウムとは別の人間だ。
 そう結論付けていても、万が一の可能性を見過ごせなかった。

『話は分かった。俺の条件を二つ飲んでくれるなら、お前と手を組んでもいい』

『条件、ねぇ……取りあえず聞いてやる』

 偉そうな口調が鼻についたが、みなもは無視して口を動かした。

『一つはアンタが目的を果たす前に、クリスタさんを逃がすのを手伝って欲しい』

『連中に気付かれない程度なら問題ねぇ。で、もう一つは?』

『キリ……お前の顔を見せろ。顔も分からない人間を信じる勇気、俺にはないよ』

 キリの息遣いが一瞬途絶える。
 そして、低いうめき声が聞こえてきた。

『ずっとオレがお前とクリスタを庇っていたのは気づいているんじゃないのか? これが信用の証ってことにはならねぇのか?』

 確かに何度もキリはここの連中から、自分たちを庇ってくれていた。それに気づいていたからこそ、彼の話に耳を傾けたのだ。

 しかし、キリがナウムかもしれないという不安が拭えない以上、首を縦に振ることはできない。

『それだけじゃあ、足らないよ』

 みなもが粘っていると、キリは諦めたようなため息を吐いた。

『あんまり人に見せたくない顔なんだがなあ……しょうがない。見た後で、やっぱり手は組まない、なんて言わないでくれよな』

 むくり、とキリは体を起こし、おもむろに頭へ手を持っていく。
 もったいぶるように、フードを左の半分だけずらしていくと――。

 現れた顔にみなもは目を見張った。
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