黒き藥師と久遠の花【完】
 予想していた憎らしい顔は、どこにもなかった。

 かろうじて目鼻口が分かる程度の、やけに腫れぼったい顔だ。
 つい最近ひどいケガでもしたのか、肌は醜くただれ、全体にカサブタが広がっているような状態だった。

 大半の人間は思わず目を背け、憐憫の眼差しを向けるか、表情を歪める顔。
 もしかしたら、誰にも顔を見せたくなかったのかもしれない。

 同情と嫌悪、どちらかの目で見られるしかないのだ。
 ほんのわずかでも己に誇りがある人間なら、何が何でも顔を見られまいとするだろう。

 顔を見せることが、今キリにできる最大の信用の証。
 これを見せられて、やっぱり止めたと引き返せるハズがなかった。

『……分かった、手を組もう。俺はクリスタさんを助けて、奪われた物を取り返せればいい。その邪魔をしないなら、いくらでも好きにやってくれ』

 静かに呟きながら、みなもは毒針を袖口にしまうと、その手をキリの首へ添える。

『でも忘れるな。もし俺を裏切ったら……楽に死ねると思うな』


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