黒き藥師と久遠の花【完】
こちらの手を払いのけず、キリはジッと見下ろしたまま口端を上げた。
『つまり、オレを絶対に裏切らないってことだな。ククッ、嬉しいことを言ってくれる』
確かに裏切る気はないが、あくまで手を組むのは互いの目的を果たすまで。
終わった直後にこの男を捕らえて牢に入れたとしても、約束を破ったことにはならないだろう。
そんなことを考えていると、キリが再び顔を近づけ、耳元で囁いた。
『まずはクリスタを逃がさねぇとな。何か案はあるか?』
『いくつか案はある。でも、せっかくここから逃げ出しても、また連中に捕まったら意味がない。すぐに誰かが保護してくれないと……』
クリスタを助けるなら、自分が彼女を安全な場所へ連れて行き、再びここへ戻ったほうが確実だ。
ただ、異変に気づいたゲイルが、奪った物を持ち去って逃げてしまうかもしれない。
できれば衣装を取り戻すまで、ここから離れたくなかった。恐らくキリも同じ気持ちだろう。
みなもは小さく息をついた。
『キリ、外にお前の仲間はいるのか?』
『いるにはいるが、血の気の多いヤツらだ。クリスタの安全は保証できねぇ。だが――』
一呼吸置いてから、キリは言葉を続けた。
『他の情報屋に頼んで、アンタの恋人がここへ来るようにした。今頃はこの近くまで来てると思うぜ』
レオニードのことも知っていたのか、抜け目のないヤツだな。
やはり油断ならない人間だと思いつつ、みなもはキリを横目で見つめる。