夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
「あー、何だ」


健吾があたしの髪の毛を見つめながら、グフと吹き出した。


「その金髪頭、キョーレツだなあ。やべーぞ。ぜってえ卒業できねえ気がするのはおれだけか」


「なんだと! 健吾のハゲ頭もいい勝負じゃんか」


ハハン、と反撃してやると、


「はっ。まじで可愛くねえなあ」


と健吾はまた机に突っ伏してしまった。


ツクツク、壁時計の秒針の音だけが教室に響き続けていた。


ブレザーのポケットから携帯電話を取り出して開き、


「ほんとに遅っせーなあ」


ぽつりと漏らすと、健吾が「あ!」と突然顔を上げた。


「そうだそうだ。携帯にかけてみればいい話じゃんなあ!」


現代の通信は素晴らしいぜ、なんて言いながら健吾は携帯電話をスクロールし始めた。


「おい、翠。お前もあっこにかけてみろよ」


そう言いながら、健吾は補欠に電話をかける。


しかし、すぐにしかめっ面をしてがっくりと広い肩幅をすくめた。


「まじかよー」


補欠の机の上の黒いスポーツバッグから鳴り響く着うたが、なんとも虚しく教室に響く。


「何で持ってってねーんだよ。携帯の意味ねえじゃん」


健吾が携帯電話を握り締めたまま、机に覆い被さった。


モンパチの小さな恋のうたが、サビの途中でプツリと途切れて再び教室が静まり返る。


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