夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
今度は、あたしがあっこにかけてみたけれど、結果は全く同じだった。


あっこのロッカーの中から、虚しく大塚愛のさくらんぼが流れて、途絶えた。


「まじかよー。あっこまで不携帯かよ」


あたしと健吾は顔を見合わせて、同時に椅子の背もたれにもたれかかった。


スーパーはすぐそこだし、交通手段はにべちゃんの愛車だし、すぐに帰って来れるからとふたりとも鞄ごと携帯電話も置いて行ったのだろう。


背もたれにもたれながら、けだるそうに健吾が呟いた。


「お前、にべちゃんの番号知らないのかよ」


「知るわけねーだろ」


つっけんどんに返して、あたしはあくびをした。


「ぐはあああっ」


他の学年も、1年生の他のクラスもとっくに準備を終えて帰ってしまった。


1Bの教室だけに煌々と明かりが灯り、暗闇に浮き彫りになっていた。


壁時計の針がちょうど18時10分を差した時、突然、健吾が口を開いた。


「おう、翠」


と健吾がむっくりとでっかい体を起こし、机に片肘をついた。


こんがり日に焼けた肌に、真っ白な歯がこぼれている。


「何だよ」


あたしも椅子から体を起こして、健吾を睨んだ。


片肘をつきながら、健吾がニタリと口角を上げた。


「前から思ってたんだけどよ。翠ってさ」


「何だよ」


「……好きだろ、響也のこと」



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