夏の空を仰ぐ花
その明日は、あたしに来るんだろうか。


眠るのが少しだけ、怖い気がした。


眠ったら、もう目を覚ますことができない気がして、怖い。


明日は誰にでも平等に訪れる、そんな当たり前のものなんだと思っていたけど。


明日なんて、どうなるか分からないものだ。


突然、病気を宣告される明日があたしに訪れたように。


当たり前に明るい明日なんて、おそらくないのだ。


あたしは、頭に爆弾を抱えてしまった。


少しずつ、ゆっくり拡大していく、爆弾を。


何度か深呼吸を繰り返したあと、あたしは星が眠る夜空を見つめた。


明日、補欠に会ったら、一番に言おう。


おはよう、はその次でいいや。


好きだ、って言おう。


全力で、伝えようと思う。


「待ってろよー、ハゲチャビン!」


殺風景な真冬の夜空を仄明るくしている月は、雪の町並みをも優しい光で包み込んでいた。


どんなに辛くても、苦しくても、容赦なく明日が来るってんなら。


待ってくれさえしないと言うなれば。


その明日が来る限り、あたしは全身全霊、前進全力で立ち向かう。


明日が来てくれる限り、あたしは死にものぐるいで生きてやる。


あたし、負けんぞ。


補欠に連れて行ってもらうんだ。


甲子園に。


だから、死にものぐるいの恋を、あたしはするの。




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