夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
こうしている、今も。


「ちょっと、お父さん。健吾くんは? 健吾くんの家は?」


「え?」


「ほら、あの子。何かあると健吾くんのとこに行く癖があるじゃない。だから、健吾くんの家に確認してみない? 一緒かもしれないわ」


「ああ、そうだな」


そうしよう、と洋子と貴司はそそくさと病室を出て行った。


「どうした。らしくないな。さすがのお前も、今回は堪えたか」


優しい声で言い、母があたしの肩に触れた。


外は雨も上がり、青空が広がっている。


あたしらしいって、どんなだろう。


あたしらしいって、どんな感じなんだろう。


そんな事すら、分からなくなった。


魂が抜かれたように放心状態になって、ただ、輝く青空を見つめた。


「どうでもいいよ、もう。もう……よく分からん」


力無く、ぽつりと呟いた。


早く病気を治して、一刻も早く大好きな学校に戻りたくて。


結衣と明里と花菜ちんと、健吾と……補欠と一緒に三年生になりたくて。


春休み返上で必死になって補習と追試を受けた。


なのに、やっとみんなに追いついたと思ったら、こんなことになってさ。


こんなのってない。


頑張れば、その分だけ、どんでん返し。


さすがのあたしだって、もう、疲れた。


もう、どんでん返しはうんざり。


これからも、きっと、その繰り返し。


「どうでもいい」


こんなこと言ったって、どうにかなるものじゃないのに。


母を困らせるだけだ、そう頭では分かっていても、コントロールがきかなかった。


「お母さん」


あたし、こんなどんでん返しはもう、ごめんだよ。


「あたし、このまま病院に居る。退院しない。このままずっと、入院してたい」

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