夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
だから、わざと見ないようにしたし、わざと知らないふりをした。


ごめんね、お母さん。


5日間ご無沙汰してた間に、一気に老けたな。


でも、やっぱり美人に変わりはないけど。


老けたな。


あたしのせいなんだよね。


あたしが心配ばかりかけるような……親不孝娘だから。


……ほんと、ごめん。












「ぐはー。しんどいー」


歯磨きと洗面を終えたあたしは、力尽きるようにベッドに横になった。


これしきのこと、本来であれば何でもない事なのに。


昏睡状態を5日間耐え抜いた体は、思っていた以上に衰えていた。


「ほれ見ろ」


「くっそう。あたし、また元気に動き回れるようになんのかな」


ショックで茫然と天井を見つめるあたしに、母が話しかけて来た。


「なあ、翠」


「あん?」


「アイザワハヤトさんて、なかなかのイケメンだな」


「えっ!」


と目を見開いたあたしに、母は楽しそうに笑った。


なんで、母が先輩の事知ってんだ?


話した事は一度もないのに。


「まあ、お前の父には到底およばんけどな」


「何で、先輩のこと……?」


ああ、と母は携帯電話の画面を見つめて、また笑った。


「今日の朝、見舞いに来てくれてな」


「は? 来たって……でも、先輩は東京の大学に」


「んなこたあ知らんよ。けど、来てくれてな。結衣と明里のこと連れて来てくれてな」


―これ、おれの携帯の番号です。もし、翠ちゃんの意識が戻ったら、その時は一番に


「連絡ください、って。だから、さっき電話して来た」



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