夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
何が何だか分からなくて、ただとにかくドキドキしていた。


同時に、自分の能天気さに腹が立った。


一気に記憶の波のようなものが体内を巡った。


相澤先輩、野球……補欠。


試合。


緊張で、体がカタカタ震えた。


「ねえ……ちょっと……」


毛布から手を出して、


「試合は……? どうなった?」


母の手を掴んだ時、廊下からバタバタと騒がしい足音が接近してきた。


「翠ちゃん!」


ゆったりしたジーンズにまっ白なスニーカー。


清潔感あふれるTシャツに、焦茶色の髪の毛。


病室に突入してきた彼を見て、あたしは言葉を失った。


「……翠ちゃん」


懐かしい顔がそこにはあった。


いつ以来だろう。


「……先輩」


少しお洒落になってあか抜けて、イケメンっぷりが2倍になった相澤先輩が今にも泣きだしそうに表情を歪めて、


「ああ、良かった、ほんとに……良かった」


言葉を詰まらせた。


あまりにも懐かしくて、まだ夢を見てるんじゃないかと思った。


「よ……よっ!」


なんて元気に手を上げたくせに、あたしの目からは一気に涙があふれていた。


「せ、せんぱ……相変わらず、イケてんね」


「何言ってんだよ……くだらね」


前日、東京に居た先輩のもとに、一本の電話があったらしい。


南高野球部の監督からだったらしい。


「びっくりしてさ。次の対戦相手は桜花だって言うだろ」


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