夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
ほとほと、呆れてしまう。


あたしは、どこまで大バカヤローなんだ。


悠々と寝てる場合じゃなかったのに。


どこまで大バカヤローになれば、あたしは満足できるんだろう。


「信じらんないよ!」


あたしは口元を押えて、必死に涙を我慢した。


秋の地区大会では一回戦で敗退したくせに。


春の選抜どころか、この夏の大会のシード権すらとれなかったくせに。


「なんで……勝ち進んでんのさ」


正直、本当に信じられなかった。


もしかしたら、これは夢の続きなのかもしれないと思った。


冗談抜きに、浦島太郎になってしまったんだと思った。


「先輩……」


あたしは、毛布の端を両手でぎゅっと握りしめた。


「これって、夢?」


クスクス笑いながら、先輩はふるふる首を振った。


「夢じゃないよ、現実だよ。言ってたよ、夏井」


―どうしても勝たなきゃいけないんです


―チャンスはこの夏。あと一回だけなんです


―甲子園に連れてかなきゃならない大事な彼女が、おれにはいるんです


「約束だから、って。あいつは簡単に約束を破るような男じゃない」


「当たり前じゃん……あたしの補欠だよ」


「そういう男だよな、夏井はさ」


先輩がぐっと言葉を飲んだ時、ドサドサと物が落ちて散らばる音がした。


「おっ、来たか」


振り返った先輩がフッと微笑んだ。


「ふたりで何そんなに買い込んで来たんだ?」


床に散乱した大量の板チョコと、ペプシコーラのペットボトル。


あたしの大好物たちが見事に散らばっていた。

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