夏の空を仰ぐ花
「大げさなもんか!」


だったら。


あたしがそれをひっくり返すまでのことだ。


あたしは、この、父譲りの左手で。


その偶然なるものを、運命にひっくり返してやるのみだ。


偶然の元を辿ってみたら、運命に行き着いたって、証明してやるの。


あたし、絶対、振り向かせてみせる。


【夏井 響也】


その名前を見つめながら、あたしは誓ったんだ。


この恋、一本勝負。


あたしの初恋、夏井響也にかける。


ところが、どっこい。


この初めての恋が、まさか最初で最後の恋になるなんて。


まさか、死にものぐるいの恋になるなんて。


あたしはまだ、ぜんぜん気付きもしなかった。





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