夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story
「お涼め……」


あたしはため息をついて、背中を丸めた。


想定外もはなはだしい。


翠未来予想図にライバル出現は想定内だったけど。


まさか、あんな美人がライバルだとは。


はなはだしいどころじゃない。


絶対、お涼に負けたくない。


簡単に譲れるような恋じゃない。


シンと静まり返る教室に、


「けっこう美人だったなあ」


としみじみとした光貴の声が染み渡る。


「天下無敵の吉田翠も、突然のライバル出現に大ピンチってとこだな」


悔しいけど、まさに光貴の言う通りだ。


「シャラップ!」


「こわっ」


苦笑いする光貴にキッと睨みをきかせて、奥歯を噛んだ。


どうする、あたし。


かなり焦ってきた。


どうする。


その時、あたしの肩をトントン叩いたのは委員長のあっこだった。


「あの……翠ちゃん」


「イエス」


振り向くと、あっこは心配そうな顔をして肩をすくめていた。


「大丈夫? あの人、明日も来るって言ってたけど」


いやはや。


「あっこ……」


さすがのあたしも、てんてこまいさ。


「せめて、翠ちゃんも野球なら。一日中、夏井くんと一緒に居られるのにね」


見張っていられるのに、とあっこはうつむいてしまった。



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